D2Cは国内外を問わずに取り入れられているビジネスモデルですが、初めて聞いた方もいるでしょう。D2Cはこれからも注目されるモデルであるからこそ、知らずに放置するのはもったいないことです。
そこで今回は、D2Cの意味や魅力、始め方などを解説します。D2Cの理解を深めたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
もくじ
D2Cの意味
D2Cは、「Direct To Consumer」を略したもので、日本語だと消費者直接取引となります。中間流通業者を通さず、自社のECサイトといったところを通じて製品を顧客に直接販売するビジネスモデルのことです。なお、D2CはDTCと呼ばれることもあります。
D2Cの魅力
D2Cは直接顧客に販売することから、中間流通業者を通すよりも顧客と関わりやすく、顧客の声を拾いやすいという魅力があります。結果として顧客が求めているものを作りやすくなり、さらにファンの獲得やブランドの認知度向上につなげられます。
また、D2Cでは従業員や実店舗の設立などでかかるコストが発生しません。決済自体もオンラインで可能となっていることから、限られた予算でも取り組みやすくなっています。
D2Cが誕生した歴史
D2Cが誕生したのは、1990年代の後半です。この頃、アメリカの市場を中心にインターネット関連企業の実需投資や株式投資が異常な高値になるという、ドットコムバブルが起きました。その頃に、D2Cが人気を集め始めました。
やがて2000年代後半に入ると、同じくアメリカでスタートアップ企業を中心にD2C事業を始めるケースが増加。「Glossier」や「Dollar Shave Club」などの企業がD2C事業で成功しました。
日本でも同じく、D2C事業で成功したブランドが複数登場しました。具体的には、「FABRIC TOKYO」や「SAKE100」、「BASE FOOD」などです。
日本とアメリカにおけるD2Cの違い
D2C事業は国際的にさまざまな企業で行われましたが、日本とアメリカでD2Cにおける違いがあります。日本の場合、昔からさまざまな伝統工芸があり、その工芸に対するファンもいました。D2Cは昔の日本のビジネスに似ていることもあり、ものづくりやファンとの関係性を重視した小規模なものでも、D2Cが成り立ちやすくなっています。
しかし、アメリカは異なります。アメリカの場合は「伝統」よりも「最新鋭」ということが重要であり、それでいて熱狂的な共感が求められます。最新鋭のものを扱って多く投資してもらい、大規模に商売するというのがアメリカのD2Cの根本的な部分です。
D2Cが普及した理由とは
D2Cが普及した理由として、簡単に挙げると以下の4つがあります。
- デジタルネイティブ世代が増加したため
- 「モノ消費」から「コト消費」へ変化したため
- これまでよりもサプライチェーンが進化したため
- 自社でECサイトを持ちやすくなったため
それぞれ1つずつ見ていきましょう。
理由1.デジタルネイティブ世代が増加したため
基本的にD2Cはデジタルネイティブ世代である、ミレニアル世代がターゲットとされることが多いです。理由として、ミレニアル世代は幼少期からデジタルに関わってきた世代であるためです。そのことから、インターネットでの購入に抵抗がありません。
また、彼らはSNSやスマホの利用に慣れていることもD2Cのターゲットとして選ばれやすい理由です。D2CとSNS、そしてスマホの相性は良く、実際にSNSを使ったマーケティングを行うD2Cブランドも数多くあります。
理由2.「モノ消費」から「コト消費」へ変化したため
これまでは、何かを購入して所有することを重視する「モノ消費」が主流の時代でした。しかし、今は異なります。現代は物が溢れかえる時代であり、「モノ消費」よりも購入した物で得られる経験や価値を重視する「コト消費」が主流になりつつあります。
D2Cブランドの多くは、良い製品を売るだけではなく、顧客のことを考えたサービスやブランドの想いなども重要視しています。結果として、「コト消費」の時代にぴったりなビジネスモデルとして注目を集めるようになりました。
理由3.これまでよりもサプライチェーンが進化したため
そもそもサプライチェーンとは、製品が生産されてから消費されるまでの経済活動のことを指します。アジア諸国の製造業者のサプライチェーンが進化し、少ないロットでも対応できるようになりました。そのおかげで、細かいニーズに応えた商品も製造できるようになったのです。
しかし、このことには欠点もあります。D2Cの場合は商品の製造から顧客への配達まで、自社で責任を取らなければなりません。サプライチェーンも含まれているからこそ、なおさら商品の管理が難しくなります。
理由4.自社でECサイトを持ちやすくなったため
D2Cは基本的にECサイトを通じて販売しますが、現代ではECサイトは手軽に作りやすくなりました。仮に自社で構築できる人がいなくても、外部に依頼しやすくなり、手軽にECサイトを持てるようになったのです。
その一方で、ECサイトが手軽に作れるサービスも登場しました。主なものとして、「Shopify」や「BASE」などです。例として「Allbirds」というD2Cブランドは、中国以外の国のECサイトをすべて「Shopify」で作ることにより、効率よく海外へ進出できました。
D2Cの始め方
D2Cを始める際には、以下の7つのステップに従って取り組んでみましょう。それぞれ詳しく紹介しているので、実際に始める際の計画を考える上で参考にしてみてください。
1.市場や顧客の調査
最初にすることは、市場や顧客の調査です。進出する市場の競合企業の規模が大きければ、進出しても思うような売り上げが出ないかもしれません。そのため、新規でも売り上げが期待できそうなポジションを見つけましょう。
顧客の調査は、顧客がどのようなことを求めているのか知るために重要です。調査方法は幅広く、インタビューでの調査やアンケートでの調査などが挙げられます。複数の調査方法を組み合わせることで、細かい部分まで把握しやすくなるでしょう。
2.ブランドコンセプトの決定
現代の消費者は、商品が誕生するまでのストーリーや世界観も購入する決め手としています。そのことから、ブランドのコンセプトも必ず設定しましょう。この際に心がけておきたいのが、ターゲットが共感するかどうかです。
魅力的なコンセプトであっても、ターゲットが共感できるようなものでなければ、購入してもらえないでしょう。だからこそ、最初のステップで調べたデータを踏まえて、共感してもらえそうなコンセプトを設定することが重要になります。
3.商品企画・開発
商品を企画する際は、前のステップで設定したコンセプトからズレていないか定期的に確認しましょう。コンセプトからズレていれば、ターゲットは魅力を感じてくれません。
実際に開発する際には、工場が必要です。工場を探す際には、品質の良さやコストなどをチェックしましょう。また、実際にプロトタイプを作ってみて、そこから改善できるところがあるかどうか調べることも大切です。
4.ビジネスモデルの策定
ビジネスモデルを決めることで、どのように儲けていくのかという道筋がハッキリします。具体的に主要な顧客や事業を始める上で必要なリソース、コスト構造などを考えます。
ビジネスモデルに関しては、細かい部分まで決めるようにしましょう。そうしなければ、流通や収益などさまざまな部分で問題が生じてしまう恐れがあります。また、お金に関わることであるため、財務シミュレーションもしておきましょう。
5.販売チャネルの準備
そもそも販売チャネルとは、商品やサービスを流通させる経路のことを指します。D2Cの場合はECサイトやSNSなどが挙げられます。この際、ブランドの世界観を伝えられるような販売チャネルを選ぶことで、顧客に世界観やコンセプトを伝えやすくなります。
また、販売チャネルを選ぶ際には費用やターゲットなども考えてみましょう。例として20代女性をターゲットとしている場合、その世代の多くが利用しているInstagramを活用するのがおすすめです。
6.プロモーションの実施
商品を知ってもらうためにも、プロモーションを実施します。この際に活用できるのが、4W1Hの法則です。4W1Hの法則は、以下の内容で構成されます。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- だれが(Who)
- なにを(What)
- どのように(How)
4W1Hの法則に当てはめる形でプロモーションの内容を考えることにより、具体的な内容を決めやすくなります。
7.販売の開始
最後に販売を開始しますが、ただ販売するのではなく、その後のことも考えましょう。例えば、アフターフォローサービスを設けておくことで、購入後に生じたトラブルに対応できるようになり、顧客の満足度を高めやすくなります。
D2Cを始める上での注意点
D2C事業を始める上では、以下のような3つの注意点があります。
- 世界観をありきたりなものにしない
- 「SNS=情報発信するためだけのツール」と考えない
- 即効性を求めない
それぞれどのような注意点なのか、1つずつ見ていきましょう。
世界観をありきたりなものにしない
別の項目で述べたように、D2Cにおいて世界観は重要です。だからこそ、ありきたりなものに設定するのはNGです。よくありそうな世界観にしてしまうと、競合商品と差別化できず、顧客を獲得できないでしょう。
「SNS=情報発信するためだけのツール」と考えない
D2CとSNSは相性が良いですが、使い方が重要です。もしSNSを情報発信するためだけのツールと考えているのであれば、思うような効果が得られないかもしれません。
SNSは情報発信するだけではなく、顧客とコミュニケーションが取れる場所でもあります。そのため、SNSを活用する際は顧客と交流できるような方針で運用しましょう。
即効性を求めない
D2Cは、事業をスタートしてすぐに効果が得られるものではありません。どうしても時間がかかるため、コツコツと進めるようにしましょう。具体的に効果が得られる時間は事業内容や取り組み次第ですが、諦めずに取り組むことでやがて大きな効果が得られるかもしれません。
D2Cで顧客とともにビジネスを成長させよう
今回は、D2Cの意味や魅力、始め方などを解説しました。D2Cは顧客へ直接商品を販売できる方法であり、デジタルが当たり前となった今だからこそ注目を集めているビジネスモデルです。D2Cの場合は顧客とともにビジネスを成長させていくことが重要になるため、そのことを忘れないようにして取り組んでみましょう。
なお、「クラチョク」ではD2C事業をサポートするサービスを展開しています。物流を起点としているサービスであるため、物流に関して悩みを抱えている方はぜひ利用してみてはいかがでしょうか。